AGAの原因について語られる際、必ずと言っていいほど話題に上がるのがストレスや生活習慣の影響です。「最近仕事が忙しくて抜け毛が増えた」「睡眠不足だからハゲてきた」といった会話は日常茶飯事ですが、医学的な観点から見ると、これらはAGAの「根本原因」ではありません。AGAの直接的な原因はあくまでDHTというホルモンと遺伝的素因にあります。しかし、だからといってストレスや生活習慣が無関係かと言えば、決してそうではありません。これらはAGAの発症トリガーを引いたり、進行スピードを加速させたりする「増悪因子」として、無視できない影響力を持っています。直接の犯人ではないものの、犯行を手助けする共犯者のような存在と言えるでしょう。まず、ストレスが髪に与える影響について考えてみましょう。人間は強いストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になります。すると血管が収縮し、血流が悪化します。髪の毛を作る毛母細胞は、血液によって運ばれる酸素や栄養素をエネルギー源として分裂を繰り返しているため、血行不良はダイレクトに栄養不足へと繋がります。栄養が届かなければ、当然ながら太く強い髪は育ちません。さらに深刻なのは、ストレスホルモンの影響です。慢性的なストレス下ではホルモンバランスが乱れ、結果として男性ホルモンの分泌量やバランスに変化が生じ、皮脂の過剰分泌などを引き起こして頭皮環境を悪化させる可能性があります。AGAによってただでさえ弱っている毛根に対し、兵糧攻めのように栄養を断ち、環境を悪化させることで、脱毛への道を突き進ませてしまうのです。睡眠不足も同様に危険です。髪の成長に欠かせない「成長ホルモン」は、入眠後の深い眠りの間に最も多く分泌されます。睡眠時間が短かったり、質が悪かったりすると、この成長ホルモンの恩恵を十分に受けることができません。また、昼間に受けた紫外線や摩擦などのダメージを修復するのも睡眠中です。修復が追いつかなければ、毛根は徐々に弱っていきます。食生活においては、髪の原料となるタンパク質や、その合成を助ける亜鉛、ビタミン類が不足すれば、当然ながら材料不足で髪は作れません。特に脂質の多い食事は皮脂の過剰分泌を招き、脂漏性皮膚炎などのトラブルを誘発して、AGAによる抜け毛に拍車をかける原因となります。重要なのは、これらの生活習慣要因が「土台」であるという認識です。AGA治療薬でホルモンという根本原因をブロックしたとしても、土台となる体がボロボロでは、髪が生える力は最大限に発揮されません。よく「薬を飲んでいるのに効果が出ない」と嘆く人がいますが、その背景には劣悪な生活習慣が隠れているケースが少なくありません。