皮膚科医として日々多くの患者さんと接する中で、近年、20代でAGA、男性型脱毛症の相談に来られる方が増えていることを実感しています。若年層におけるAGAは、ご本人にとって非常に深刻な悩みであり、精神的な負担も大きいものです。まずご理解いただきたいのは、20代でのAGA発症は決して特別なことではない、ということです。統計的には20代男性の約10%がAGAを発症すると言われており、これは決して低い数字ではありません。AGAの根本的な原因は、男性ホルモンであるテストステロンが5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、このDHTが毛乳頭細胞の受容体に結合することで、毛髪の成長期を短縮させてしまうことにあります。このDHTに対する感受性の高さが、遺伝的に受け継がれる主要な要因です。しかし、発症の引き金や進行速度には、遺伝以外の要素、すなわち生活習慣やストレスなどが関与していると考えられます。特に20代は、生活リズムが不規則になりがちであったり、学業や仕事、人間関係などでストレスを受けやすい環境に置かれることが多い年代です。これらの要因が複合的に作用し、AGAの発症を早めたり、進行を加速させたりする可能性があります。重要なのは、薄毛の兆候に気づいた際に、それを年齢のせいにして放置しないことです。「まだ若いから大丈夫」「そのうち治るだろう」といった自己判断は禁物です。AGAは進行性の脱毛症であり、早期に適切な介入を行うことが、将来的な毛髪の状態を維持するために極めて重要となります。現在、AGA治療には医学的に有効性が証明された内服薬(フィナステリド、デュタステリド)や外用薬(ミノキシジル)があります。これらの治療薬は、ヘアサイクルを正常化させ、毛髪の成長を助ける効果が期待できます。もちろん、治療効果には個人差があり、根気強い継続が必要です。しかし、専門医の診断のもとで適切な治療を開始すれば、多くの場合、進行の抑制や改善が見込めます。自己流のケアに時間とお金を費やす前に、まずは専門医に相談し、正確な診断を受けることを強くお勧めします。それが、20代のAGAと向き合うための最も確実で効果的な一歩となるでしょう。
— AGA —
専門家が語る20代AGAの真実
2022年2月16日