男性型脱毛症(AGA)に関する情報は巷に溢れていますが、中には医学的根拠の乏しい誤解や迷信も少なくありません。皮膚科医として日々患者さんと接する中で、よく耳にする誤解についていくつかお話ししたいと思います。まず、「頭皮が脂っぽいから、洗浄力の強いシャンプーでゴシゴシ洗うべき」という誤解です。確かに皮脂の過剰分泌は頭皮環境に良くありませんが、洗浄力が強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎると、かえって頭皮が乾燥したり、バリア機能が低下したりして、問題を悪化させることがあります。シャンプーは自分の頭皮タイプに合ったものを選び、指の腹で優しくマッサージするように洗うのが基本です。「海藻類を食べると髪が増える」というのもよく聞く話ですが、これも科学的根拠は十分ではありません。海藻類に含まれるミネラルなどが髪に良いとされることもありますが、特定の食品だけを大量に摂取しても、それだけでAGAが改善することはありません。重要なのは、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取することです。「頭皮マッサージをすれば髪が生える」という期待も大きいようですが、マッサージ自体に直接的な発毛効果は証明されていません。血行促進やリラックス効果は期待できますが、それだけでAGAが治るわけではありません。むしろ、強く擦りすぎると頭皮を傷つける可能性もあります。「帽子をかぶると蒸れてはげる」というのも誤解です。通気性の悪い帽子を長時間かぶり続けるのは衛生的によくありませんが、帽子をかぶること自体がAGAの直接的な原因になることはありません。むしろ紫外線から頭皮を守るという点ではメリットもあります。「AGAは治らない」という諦めの声も聞かれますが、これも正確ではありません。完全に元通りにするのが難しいケースはありますが、AGAは治療可能な疾患です。早期に適切な治療を開始すれば、進行を抑制し、改善させることは十分に可能です。これらの誤解に惑わされず、正しい情報に基づいて対策を行うことが重要です。そのためにも、自己判断せずに専門医に相談し、医学的根拠に基づいたアドバイスを受けることをお勧めします。
— 男性のスキンケア —
専門医が語る男性型脱毛症の誤解
2025年2月15日