ＡＧＡ（男性型脱毛症）の治療薬を使い始めた方が最も気になることの一つは、「いつから効果が現れるのか？」という点でしょう。薄毛の悩みを抱えている方にとっては、一日でも早く効果を実感したいと願うのは当然のことです。しかし、ＡＧＡ治療薬の効果発現には、ある程度の時間が必要であることを理解しておく必要があります。髪の毛には「ヘアサイクル」という成長の周期があります。通常、髪の毛は成長期（２年から６年）、退行期（約２週間）、休止期（３ヶ月から４ヶ月）というサイクルを繰り返しています。ＡＧＡを発症すると、このヘアサイクルが乱れ、特に成長期が短縮されてしまいます。ＡＧＡ治療薬は、この乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻すように働きかけるため、効果が目に見える形で現れるまでには時間がかかるのです。一般的に、内服薬であるフィナステリドやデュタステリドの場合、効果を実感し始めるまでには、早い方でも３ヶ月程度、通常は６ヶ月程度の継続服用が必要とされています。これらの薬はＤＨＴの生成を抑制し、ヘアサイクルを正常化させることで抜け毛を減らしますが、髪が新たに生え、太く長く成長するには時間がかかります。まずは抜け毛が減ってきた、という変化から感じ始める方が多いようです。一方、外用薬のミノキシジルの場合も、効果発現までには同様に時間がかかります。日本皮膚科学会のガイドラインによると、効果判定には最低でも６ヶ月間の継続使用が必要とされています。ミノキシジルは休止期の毛包を成長期に移行させる作用があるため、使用開始後１ヶ月から２ヶ月程度の間に、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」と呼ばれる現象が起こることがあります。これは、古い髪が新しい髪に生え変わるための準備段階であり、効果が出始めている兆候とも考えられますが、この時点で不安になって使用を中止しないことが重要です。いずれの薬剤を使用する場合でも、効果の現れ方には個人差があります。年齢、ＡＧＡの進行度、頭皮の状態、生活習慣、遺伝的要因などが影響するため、全ての人に同じ期間で同じ効果が出るとは限りません。焦らず、根気強く治療を続けることが、ＡＧＡ治療薬の効果を実感するための鍵となります。最低でも半年間は継続し、医師の指示に従って治療を進めるようにしましょう。