男性型脱毛症(AGA)に悩む方なら、ジヒドロテストステロン、通称DHTという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。このDHTこそが、AGAを引き起こす主な原因物質とされています。では、DHTはどのようにして体内で作られ、なぜ髪の毛に悪影響を与えるのでしょうか。その生成メカニズムを理解することは、DHTを抑える対策を考える上で不可欠です。私たちの体内には、男性ホルモンの一種であるテストステロンが存在します。テストステロンは筋肉や骨格の発達など、男性らしい体つきを維持するために重要なホルモンですが、それ自体が直接薄毛を引き起こすわけではありません。問題となるのは、このテストステロンが特定の酵素の働きによってDHTに変換されるプロセスです。その酵素の名前は「5αリダクターゼ」。主に前立腺や毛包(毛根を包む組織)に存在します。テストステロンが血流に乗って毛包に到達すると、そこに存在する5αリダクターゼと結合し、化学反応によってDHTへと変換されます。生成されたDHTは、毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体という「受け皿」に結合します。この結合がスイッチとなり、毛母細胞に対して「髪の成長を止めろ」という指令(脱毛因子TGF-βなど)が出されます。その結果、髪の毛の成長期が通常よりも短縮され、髪は太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。これが繰り返されることで、徐々に薄毛が進行していくのです。つまり、DHTの生成を抑えるということは、このテストステロンからDHTへの変換プロセスを阻害するか、あるいはDHTが受容体に結合するのを防ぐことを意味します。このメカニズムを標的とした対策が、AGA治療の鍵となるのです。
— 抜け毛 —
脱毛原因DHTの生成メカニズム
2020年10月24日