３０代半ばを過ぎた頃からだろうか、朝起きると枕に付着する抜け毛の数が妙に気になるようになった。最初は気のせい、あるいは季節的なものだろうと高を括っていたのだが、ある日、風呂上がりに鏡で頭頂部をよく見てみると、明らかに地肌が透けて見えていることに気づいた。ショックだった。まだ若いと思っていたし、父親も祖父も特に薄毛ではなかったから、自分がそうなるとは考えもしなかった。インターネットで調べると「男性型脱毛症」「ＡＧＡ」という言葉が目に飛び込んできた。症状のパターンを見ると、どうやら自分の状態は頭頂部から薄くなるＯ字型に近いようだ。これはまずい、何とかしなければ。そう思い、評判の良さそうな育毛シャンプーやトニックを試してみたが、気休めにしかならなかった。焦りと不安ばかりが募る日々。このままではいけないと意を決し、皮膚科の門を叩いたのは、最初の異変から１年近く経ってからだった。医師は私の頭皮をマイクロスコープで観察し、やはりＡＧＡであると診断した。そして、内服薬（フィナステリド）と外用薬（ミノキシジル）による治療を提案された。副作用の説明も受けたが、藁にもすがる思いで治療を開始することにした。毎日欠かさず薬を飲み、塗り薬を塗る。正直、最初の数ヶ月はほとんど変化を感じられず、心が折れそうになった。しかし、医師の「効果が出るまで時間がかかりますから、焦らず続けましょう」という言葉を信じ、ひたすら続けた。半年が過ぎた頃だろうか、ふと気づくと、シャワー時の抜け毛が減っているような気がした。そして１年後、明らかに頭頂部の地肌の透け感が改善しているのが分かった。完全に元通りとはいかないまでも、明らかに髪にボリュームが出てきたのだ。あの時、勇気を出して病院に行って本当に良かった。治療は今も続けているが、以前のような深刻な悩みからは解放され、精神的にもずっと楽になった。もし同じように悩んでいる方がいたら、一人で抱え込まず、早めに専門医に相談することをお勧めしたい。