プラセンタに含まれる豊富な栄養素や成長因子が、育毛に良い影響を与える可能性は理解できました。では、その効果は科学的にどの程度証明されているのでしょうか。医学的な「科学的根拠(エビデンス)」という観点から見ると、プラセンタの育毛効果については、まだ「限定的」あるいは「十分ではない」というのが現状です。プラセンタの育毛効果に関する研究は、これまでにもいくつか行われています。実験室レベルの研究(in vitro)では、プラセンタエキスが毛乳頭細胞や毛母細胞の増殖を促進したり、ヘアサイクルに関連する遺伝子の発現に影響を与えたりすることを示唆する結果が報告されています。また、動物実験や、人間を対象とした小規模な臨床研究(パイロットスタディ)においても、プラセンタエキスを含むローションの塗布や、プラセンタエキスの注射などによって、毛髪の密度が増加したり、太さが改善したりといった肯定的な結果が示されたものもあります。これらの研究は、プラセンタが育毛に対して何らかのポジティブな作用を持つ可能性を示唆しており、期待を持たせるものです。しかし、これらの研究の多くは、対象者の数が少なかったり、比較対照群(プラセボなど)の設定が不十分であったり、長期的な効果や安全性が十分に検討されていなかったりといった、研究デザイン上の限界も指摘されています。より信頼性の高いエビデンスとされる、大規模で質の高いランダム化比較試験(RCT)によって、プラセンタの明確な発毛・育毛効果が確立されているかというと、残念ながら現時点ではまだ十分なデータがあるとは言えません。特に、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)といった進行性の脱毛症に対して、プラセンタが医薬品(フィナステリドやミノキシジルなど)と同等の効果を持つことを示す質の高いエビデンスは乏しいのが実情です。したがって、プラセンタを「確実に髪が生える特効薬」のように捉えるのは誤りです。あくまで、育毛をサポートする可能性がある成分の一つとして、補助的なケアとして利用を検討するのが現実的なスタンスと言えるでしょう。今後の研究によって、より明確なエビデンスが示されることが期待されます。
— AGA —
プラセンタ育毛の科学的根拠レベルは?
2020年7月30日