AGA治療薬は高い効果をもたらす一方で、医薬品である以上、副作用のリスクと隣り合わせです。性欲減退、勃起不全、多毛症、動悸、めまい、そして稀ではありますが肝機能障害など、様々な症状が報告されています。治療中にこれらの体調不良を感じたとき、多くの人は「せっかく生えてきた髪を失いたくない」という思いと、「体の不調を治したい」という思いの間で葛藤することになります。しかし、ここで明確にしておきたいのは、健康を害してまで続けるべき美容的治療など存在しないという原則です。副作用が強く出た場合、それは身体からの「やめどき」のサインかもしれません。特に注意が必要なのは、肝機能障害のような自覚症状が出にくい内臓へのダメージや、動悸・不整脈といった循環器系のトラブルです。これらは放置すると命に関わる重大な事態を招く恐れがあります。定期的な血液検査で異常値が出た場合や、日常生活に支障をきたすほどの動悸を感じた場合は、迷わず服用を中止し、医師の診断を仰ぐべきです。髪の毛は最悪なくなっても命に別状はありませんが、心臓や肝臓は代わりが効きません。この優先順位を見誤ってはなりません。一方で、性欲減退や軽い初期脱毛、多少のむくみといった、QOL(生活の質)には関わるものの、直ちに健康上の危機ではない副作用については、医師との相談の上で対処法を探ることが可能です。例えば、薬の量を減らすことで副作用が軽減する場合もありますし、薬の種類を変える(フィナステリドからデュタステリドへ、あるいはその逆など)ことで体に合うものが見つかることもあります。また、性機能に関する副作用は、心理的な要因(プラセボ効果)も大きいため、気にしすぎないことで改善するケースもあります。どうしても内服薬が体に合わないという場合は、外用薬(塗り薬)のみに切り替えるという選択肢もあります。外用薬は成分が全身に回りにくいため、内服薬に比べて全身性の副作用が出るリスクが格段に低くなります。もちろん、内服薬ほどの劇的な発毛効果は望めないかもしれませんが、現状維持や軽度の改善であれば十分期待できます。「薬が飲めない=治療終了」と短絡的に考える必要はありません。重要なのは、副作用が出たからといって自己判断で勝手にやめたり、逆に無理をして飲み続けたりしないことです。必ず主治医に症状を詳細に伝え、医学的な見地から「中止すべきか」「減薬して様子を見るか」「別の方法に変えるか」の判断を仰いでください。AGA治療のやめどきを決める権利はあなたにありますが、その判断材料を提供し、安全を守るのは医師の役割です。健康な体があって初めて、豊かな髪を楽しむことができるのです。副作用は体からの警告音だと捉え、安全第一で治療と向き合ってください。